2024年度リスキリング推進シンポジウム1日レポート

2024年度リスキリング推進シンポジウム1日レポート

令和7年2月19日(水)に、茨城県庁9階講堂にてリスキリング推進シンポジウムが開催されました。茨城県内でリスキリングを積極的に推進する企業への表彰や、各企業の成功事例を紹介。また、第二部では「一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ」代表理事であり「いばらきリスキリング戦略アドバイザー」に就任した後藤宗明氏による基調講演も開催。実例から得られるヒントをもとに、企業でのリスキリングの実践や従業員個人のマインドセットについて探る有意義な時間となりました。そんなシンポジウム当日の模様をご紹介します。


第一部:2024年度茨城県リスキリング推進企業等表彰

まずはじめに、主催者を代表して大井川知事の挨拶からシンポジウムの幕が開けました。茨城県におけるリスキリングのロールモデルとなる表彰企業への期待を込めた祝辞とともに、日本における人材不足問題を解消し今後の経済蘇生を図るためには、特にデジタルスキルを中心としたリスキリング推進が鍵であると強調しました。

続いて、リスキリング推進企業の表彰が行われました。自らの経営戦略のもとリスキリングを推進し、生産性の向上や新分野への進出、従業員の処遇改善に積極的に取り組んでいる企業を表彰するものです。 ベストプラクティス賞には海老根建設株式会社と有限会社櫻井運輸、水木木材工業株式会社の3社、グッドプラクティス賞は社会福祉法人仁心会、株式会社ベテルの2社が受賞となりました。表彰後には選考委員長の後藤氏より講評が述べられました。

■ベストプラクティス賞受賞企業

海老根建設株式会社
有限会社櫻井運輸
水木木材工業株式会社

■グッドプラクティス賞 受賞企業

社会福祉法人仁心会
株式会社ベテル

受賞した各企業の講評については、シンポジウムのリーフレットでご紹介しています。


第二部:基調講演「人手不足時代を乗り越える ~中小企業におけるリスキリングの実践~」

後藤氏が講師となり、人手不足解消の最大の一手になりうるリスキリングの実践について講演しました。

【働くことの見返りに得られるもの、求めるもの】

まずはじめに、後藤氏は「働くことの見返りに得られるものは何でしょうか?」と問いかけます。

働くことで得られるものは賃金と、経験を通じて得られるスキルであると後藤氏。そこで、企業は採用時に「どんなスキルが得られるか」を求職者へ明確に伝えることが重要だと指摘します。デジタル化が進む中、従業員は自身の将来に不安を抱えており、これからも活躍し働き続けられるためのスキルを、今働いている会社で見つけられるかどうかが大きなカギになると後藤氏は話しました。

【世界最新のAI技術と、日本のデジタル競争力】

AIやロボット技術の活用など、デジタル化が著しい昨今。2025年最新の自動化技術は、人間に限りなく近い、またはよりスムーズな動作を実現するほどで、人が担っている仕事が今後変化する可能性があるといい、後藤氏はリスキリングの重要性を強調します。一方、日本のデジタル競争力や人材レベルは年々低迷していると後藤氏。AIやロボットの活用が進む中、日本が国際競争力を維持するためには我々人間のアップデートも必要ということで、リスキリングに注目が集まっている側面もあります。

【リスキリングに成功する企業の条件】

リスキリングは、企業が新たな事業戦略に適応するために従業員に必要なスキルを習得させる取り組みであり、単なる自己啓発の「学び直し」とは異なると後藤氏は話します。企業は戦略と一致した形でリスキリングを推進することが求められ、成功すれば社員の定着率向上やキャリアアップ、賃上げの実現にも寄与すると言えるでしょう。

後藤氏は、様々な経営者に取材をしてきた中で、成功企業にはいくつかの共通点があったと言います。まず、経営者が率先してリスキリングに取り組むことが重要で、新規事業の適性が見極めやすくなり、抜擢や権限移譲がスムーズになるといいます。設備投資やデジタルツールの導入に関する意思決定が経営者のデジタルリテラシーに依存することもポイントです。更に、外部の専門家・プロジェクトを活用したリスキリングが効果的と強調しました。 企業においては、求められるスキルの明確化と現在従業員が持っているスキルを明らかにし、「何を何のために学ぶのか」を明確にするべき(学びの定量化)とも指摘。そのギャップを埋めるのがリスキリングであり、企業は従業員が社内で必要なスキルを獲得できるよう支援を行うことが重要です。

【定年4.0時代のリスキリング】

現在、人生100年時代と言われ、中高年のリスキリングが重要なテーマとなっています。そこで後藤氏が提案しているのが「定年4.0」という考え方で、リスキリングを通じて自分のキャリアを自ら創造することです。そのために40代からスキルや学び、健康、お金、人間関係の分野に投資してほしいと後藤氏。また、企業には中高年も活躍できるリスキリングの舞台を用意し、リスキリング支援を積極的に行ってほしいとも話します。

今後、人間とAI、ロボットが共に働く時代が近づいている中で、企業経営者には従業員のリスキリング支援を積極的に取り組んでいってほしいと、後藤氏は最後に締めくくりました。


第三部:表彰企業による取組み内容発表

ベストプラクティス賞を受賞した三社による取り組み内容の発表が行われました。

各企業の取り組みについて詳しくはこちらの記事を参照ください。


第四部:トークセッション

最後の第四部では、後藤氏がファシリテーターを務め、パネリストに滝川麻衣子氏(一般社団法人デジタルジャーナリスト育成機構理事、EVeMエバンジェリスト)、とベストプラクティス受賞三社より柳瀬香織氏(海老根建設株式会社代表取締役)、櫻井正孝氏(有限会社櫻井運輸代表取締役)、磯崎盛司氏(水木木材工業株式会社専務取締役)を迎えて、トークセッションを実施しました。

リスキリングの専門家である後藤氏、そして滝川氏も三社の取り組みに興味津々で盛り上がり、具体的なリスキリングの取り組みや考え方、苦労したことや成功へのプロセス、さらには会場が笑いに包まれる裏話まで、深掘りした内容を聞くことができました。三社の秘伝のリスキリングメソッドを共有いただき、茨城県の成長・発展につながる貴重な機会となりました。

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