意欲的な学びのマインドを醸成し、
「人財」を育てる
桂建設株式会社 (茨城県牛久市)
牛久市に根を下ろし、茨城県南地域を中心に公共インフラや民間の土木・舗装工事を手掛ける桂建設株式会社。男性職場というイメージが先行しがちな建設業界において、代表取締役の石井高子さんを筆頭に男女問わず活躍できる職場づくりに積極的に取り組み、人材育成・業務効率化を実現しています。リスキリングの根幹でもある「意欲的な学び」を醸成する環境の整備そしてDX推進による生産性の向上に繋がる取り組みが評価され、「令和7年度 茨城県リスキリング推進企業等表彰」にてグッドプラクティス賞を受賞されました。
石井高子社長、採用業務や「人財」育成も担う営業部の松澤容子さん、そして「いばらきリスキリング戦略アドバイザー」の後藤宗明さんによる対談の様子をお届けします。
生産性向上とキャリアプランを同時解決する抜擢
今や、ありとあらゆる業種においてデジタルスキルの活用は必要不可欠ですが、建設現場においても同様です。3D測量技術や、IoTによる建設重機の自動コントロールなど、ICT施工の導入・利活用が企業存続の重要なカギとなっています。桂建設株式会社がリスキリングに取り組む主たる目的もまさに「デジタル化による生産性向上」でした。「具体的にどのような取り組みを通して生産性向上を実現されましたか」と、後藤さんの質問から対談はスタートしました。
「建設業界全体として、ICT施工への取り組みはもう避けては通れないものになっています。当社でも、茨城県南地域でいち早くICT施工の内製化に取り組みたいと考えまして、まず3Dスキャナを導入しました。でも、使い方も何もわからない状態です。そこで、DXチームを立ち上げ、その使い方や活用方法などを学んでもらいました。それが、リスキリングの第一歩でしたね」と、石井社長。DXチームに抜擢した若手スタッフもICT施工に興味を持ち、抵抗もなく、チーム結成から技術習得まではスムーズな流れだったといいます。その後受注した切土工事現場でも実際に3Dスキャナを活用したICT施工を実践するなど、スキルの利活用による業務効率化は順調に進んでいます。
同社のDXチームで活躍しているのは女性2名。そのうち1名は、元々建設現場での業務担当からの転任なのだそう。「女の子でも現場代理人(責任者)見習いとして頑張っていたのですが、現場でのプレッシャーや将来のキャリアへの不安があって職種を変更したいという相談があり……。それならば、ICT施工の内製化に向けたノウハウを勉強して、桂(建設)の女の子たちICTバリバリできて凄い!と言われるぐらいやってみたら、と勧めて取り組んでもらったんです。それからかなり勉強して、1年後、ICT技術を使う大きな現場に彼女が代理人として入りました。どうだった、と聞いたら『面白いです!』と」
抜擢の成功により、スキルの習得と成長に繋がった好事例です。成功の要因について、石井社長は「単に現場で施工をするというだけではなく、リスキリングで色んなことを勉強するのが彼女自身も面白かったのではないでしょうか」と話します。
課題解決に必要なポジションを用意し、リスキリングを加速
また、同社の生産性向上に寄与した取り組みとしてもうひとつ特筆したいのが「建設ディレクター」という新たな職種の創設です。建設ディレクターについて、石井社長から後藤さんに説明がありました。
「3年前に新設したポジションです。現場代理人と連携し、現場作業を進める際に必要な書類作成など支援業務を担います。それまでは現場担当者自身が現場作業後に会社へ戻ってきてから書類を作成していたので、どうしても残業時間が多くなりがちでした。建設ディレクターを置いたおかげで、残業時間の削減にも繋がりました」と石井社長。
定時退社の頻度も増えたといい、働き方改革の実現にダイレクトに貢献している取り組みです。現在、建設ディレクターとして活躍している中には業界未経験で入社した女性スタッフもいるそう。3年間、OJTスタイルで学び専門知識とスキルを習得し、今では主体的に業務を進められる「人財」に成長しました。
このような、若手や女性陣による積極的な学びの姿勢はベテランの技術者をはじめ他のスタッフにも刺激を与えており、会社全体に学びの空気が波及しているといいます。
その牽引役として、スキルや資格習得の情報提供などを行っているのが人財育成チームの松澤さん。「こんな資格がありますよ、こんな勉強会がありますよ、と参加者を募ると想定以上に手が挙がります」と、社内の学習意欲が高まっていることを喜びます。
また、同社では学習を業務の一部として位置づけ、業務と並行して学べるよう、就業時間内の研修受講も認めています。より学びやすいよう、社内の書庫スペースをモニタールーム兼打合せスペースにリフォームし環境も整備。
後藤さんもこの学びの醸成を「素晴らしいですね!」と高く評価します。
モチベーションに直結する資格取得をサポート
建設業界で一人前の技術者として認められるには、数多くの資格取得が不可欠です。国家資格である土木施工管理技士をはじめ、重機の運転に必要な免許や、玉掛けと呼ばれる技能など。「以前は、最低限の資格だけ取って、他の必要な資格は2~3年経験を積んでから取得する、という流れがありました」と松澤さん。それを見直し「入社直後からすぐに必要資格を取得する」方針に転換したといいます。そのために、資格取得計画書を作成し、松澤さんが取得手続きの手配などサポートも行っています。
「それはなぜですか?」と後藤さんの問いかけに、松澤さんは次のように答えました。
「資格があると、現場で出来ることがものすごく広がるんです。建設業の花形である重機も、乗りたくても免許がなければ乗らせてあげられない。でも免許を持っていれば、それだけで乗れるチャンスが増えます」。
続けて、石井社長。「これまでにも、重機に憧れていて乗りたかったけれどもなかなか免許が取れなくて運転できない、とがっかりして辞めてしまった子がいました。せっかくやる気があったんだから、それを察知してやらせてあげればよかったなと後悔しています」。そんな苦い経験から、入社していち早く資格を取れる体制を会社側で整えることで、本人の希望職種やキャリアビジョンの実現、モチベーションの向上にも繋げたいと期待を込めています。必須資格取得にかかる受験料や交通費は全額会社負担、さらに難関の一級土木施工管理技師の受験に際しては、なんと約40万円相当のオンライン学習費用も同社が負担し合格後には月額3万円の資格手当も用意しています。他にも希望があった資格受験費用も支援するなど、社員の積極的な学びに対し手厚いサポート体制を整えている部分を後藤さんは高く評価します。
「学習は企業の先行投資。リスキリング=退職してしまうのでは、と思いがちだがそれは違う」と後藤さんは論じます。
リスキリングには必ず処遇の改善がセット。「リスキリングして新たにスキルを習得したのに給与・報酬に反映されない」「身につけたスキルを使って活躍できる場がない」から、退職に繋がるのだと訴えます。後藤さんの話に頷き、「資格を取って辞めちゃう人もいると思います。でも、この業界が好きで、面白いと思ってくれているなら、桂(建設)で身につけたスキルは他のところでも生きるので、それでいいんだという気持ちです」と石井社長。
ただ、積極性のあるスタッフへの支援は「ベテランスタッフとの温度差が発生しやすい」とも懸念する後藤さん。非常に和気あいあいとした雰囲気の桂建設では「ICTとかデジタル化とか、自分には無理だというスタッフも数名います。ですが、そこは無理強いしないで、現場を熟知した熟練の技術を生かして、若手ICT技術者に不足している経験値の部分を補完してもらって」と適材適所で円滑な組織運営を行っているといいます。
最後に、石井社長は次のように締め括りました。
「当社のスタッフは、32名中8名の女性が活躍しています。私自身も建設業界で長く働いてきて、やっぱり、『女性だから』という肩身の狭さを強く感じてきたので、そのイメージにすごく抵抗があります。女の子にも、若い子にもこの仕事は出来るんだ、と皆さんに伝えたいので、男女や年齢関係なく誰でも活躍できる会社にしたいですね。令和6年には、当社の女性スタッフが優秀技術者賞として知事表彰を受けました。女性スタッフ3人だけで現場を担当して驚かれることもあります。従来の、建設業の現場のイメージを払拭するという思いも込めて、誰でも活躍できる場を広げていきたいです」
いばらきリスキリング戦略アドバイザー後藤宗明氏 プロフィール
富士銀行(現みずほ銀行)入行。渡米後、グローバル研修領域で起業。帰国後、米国の社会起業家支援NPOアショカの日本法人を設立。米フィンテックの日本法人代表、通信ベンチャー経営を経て、アクセンチュアにて人事領域のDXと採用戦略を担当。その後、AIスタートアップのABEJAにて米国拠点設立、事業開発、AI研修の企画運営を担当。10年かけて自らを「リスキリング」した経験を基に、リクルートワークス研究所特任リサーチャーとして「リスキリング~デジタル時代の人材戦略~」「リスキリングする組織」を共同執筆。2021年、リスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。
桂建設株式会社
| 住所 | 茨城県牛久市さくら台1-18-4 |
|---|---|
| 事業内容 | 土木、舗装工事業 |
| HP | https://katsura-k.com/ |
