県内のリスキリング事例

自社独自の人材育成プログラム「TMS」
体系的に学び、ITスキルを社内で強化

トモヱ乳業株式会社 (茨城県古河市)

長年、事業を続ける企業であるほど現場で起きやすいのが、業務の属人化問題。解決の鍵となるのは、社員の「スキルの見える化」です。個々人のスキルを明確にすることで、適切な人員配置、そして経営判断において大きな材料となります。
古河市のトモヱ乳業では、300人超の工場において大規模な人材育成プログラムを2022年より稼働中。特に製造メンバーの成長状況を管理することで工場全体で新スキル習得を目指します。

真の“乳業マン”を育てる
育成プロジェクト「TMS」発進

生産規模トップクラスを誇るトモヱ乳業は、自社ブランドをはじめ国内大手のOEM製造も手がける、地元古河でも高い知名度を誇る市乳メーカー。戦後から培ったその技術力を、さらに向上させようと近年さまざまな取り組みを見せています。あらゆる業務の自動システム化や技術者育成を図るための新部署立上げ、自社の学習制度「TMS」の開始。

これら全てが有機的に繋がり、老舗メーカーの新たな一歩を踏み出そうとしているのです。
「T(つくろう)M(学ぼう)S(成長しよう)」を意味するTMS。食品製造技術や設備技術、ITやマーケティングなど、基本的な知識を学べるカリキュラムを作成し、参考テキストや理解度を図るコーステストを実施します。教材は社員が自ら作り、テストも独自に用意。各部署の知を結集させた体系的なプログラムとなっています。

実施初年度の2022年8月に開催された第1回のコーステスト受験者は延べ約60名程度だったところ、2024年2月開催の第2回では延べ約170人に増加しました。主な対象は社員のおよそ7割が所属する食品製造部門のメンバーですが、その他部門の社員も積極的に受けています。

100以上にのぼる教科は、食品メーカーに必要な基礎計算や製造工程に関する基礎知識、「なぜなぜ分析」・「QC7つ道具」など品質管理技術、購買や資材に関する知識など多岐に渡ります。さらにITの基礎知識やマーケティング分析、労働安全法、食品安全基本法、環境基本法などの法規、会計知識といった実務以外のあらゆる知識も学習します。

社員が自ら講師となった講習には現場の社員も積極的に参加

自ら学べる環境づくりに注力
内外の知識の習得を

講座はオンラインでアクセスし、各自の好きなタイミングで受講OK。講座ごとに必ず確認問題を受講し、理解度を測ります。年に1回行われるコース認定テストだけでなく、テスト後の補講という形で個別の受講やリアルの現場教育も開催。実際に活躍する社員自ら講師となって簡単な基礎作業やロボット技術を学ぶ機会を設けています。

最終のコーステストに合格すれば最大10万円の報奨制度を用意。また、業務に関する国家資格については諸経費の支援や難易度に応じた報奨システムも導入。しっかり社員に還元しながら会社全体でのスキル習得を図ります。

製造ラインでのローテ―ションの合間に発生するわずかな時間や退勤前の30分など社員が学ぶことを許可。こうした勤務中に学べる環境づくりにも全社で力を注いでいます。TMSを中心とした研修時間は年間1人あたり平均29時間を確保。そのおかげか全てのコースに合格した社員も出てきています。

もちろんTMS以外にも資格習得を奨励しており、資格の難易度に応じた報奨制度も設定。業務に必要な資格はもちろん、ITパスポートや情報処理に関する資格の取得も奨励しています。「内部、外部の知識を深める事で社内全体のスキルアップに期待が見込まれます今後も資格取得に積極的にチャレンジする風土づくりを目指していきたいですね」と管理部の部長を務める佐藤取締役は言います。

「独自の学習制度『TMS』でリスキリング環境の向上を図ります」と語る佐藤取締役

DXの核となる部署から
生産性効率の向上を図る

トモヱ乳業では生産性効率を向上させるため、組織的な抜本改革を数年間に渡り、行っています。
その一翼となるのが生産技術課です。生産・物流設備のメンテナンス計画や各部署のサポートをはじめ、製造全体で生産技術に共通した課題を解決するプロフェッショナル集団です。

2024年初頭時点でのメンバーはロボット技術に長けていたり、情報処理、電気関係に強い技術者など少数精鋭の3名で構成。TMSの講師としても活動し、技術者育成の一助となっています。
「各部署が生産技術課の支援を受けながらトラブルの対処をできるようになったので各段に現場の対応力が上がりましたね」と佐藤取締役は語ります。
その他にも国家試験を受ける若手社員のサポートなどバックアップ体制は抜群。生産の現場から生産技術課を希望する声もあるのだとか。

もう一翼として欠かせないのがシステム課です。各現場にて手作業で進める作業について、システムによる効率化を図ります。これまで2020年に販売管理システム、昨年には生産管理のシステムをリリース。今年は購買、原価管理のシステムも完成予定です。

また、同時に業務プロセスの自動化を実現するプログラムの「RPA」や共有ソフトウェアの導入を通して、情報の統一化を目指します。実際にある部署でRPAを導入したところ、全体の20%の作業の自動化に成功。「今後も自動化できる場面のサポートを色々な部署と進めながら、当社全体のベースアップを図りたいですね」とシステム課の廣木さんが語ってくれました。

今後は海外の働き手も分かるような動画マニュアル作成、日報の電子化、標準時間工数を定めるプロジェクトなど、まだまだ挑戦する事業が控えていると言います。生産性向上をするためには、これまでと同じではいけない。数々の果敢なチャレンジ、即ちリスキリングが老舗メーカーの未来を担っています。

トモヱ乳業では必要なスキルを身に付けることで社員の処遇にも反映するシステムを用意

トモヱ乳業株式会社

住所 〒306-0235 茨城県古河市下辺見1955
事業内容
HP https://tomoemilk.jp
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